とある日の退屈な読書家のはなし。
2012.08.06(Mon)
お久しぶりの更新です。
今回は、なんだか物足りないと感じた不思議な男の話。
そして、予告。
以下からどうぞ。
(写真はありません)
『彼』が、この家を去って、二年と四ヶ月ほどが経った今。
家の主である男は、ひとりの時間を持て余していた。
毎日毎日、暇つぶしのために読書に浸っていた。
また、昼下がりには空を舞う蝶を眺めてみたりして。
しかし、それもそろそろネタが尽きてきたようだ。
棚には、その大変広い空間を思わせないほど、大量に本が詰められていた。
まるでパズルのように隙間を埋められている。
しかし、男の読んでいた本はこれだけではない。
要らなくなった本は古書店に売りに行き、新しく別の本を買う。
そのため、月に一度はほとんどの本が入れ替わる。
しかし、何度それを繰り返しても、本棚に隙間ができることはなく、
逆に、棚から外の空間を少しずつ本が侵食しつつあった。
なぜなら、彼は持ち前の速読ぶりで一日でシリーズをひとつ読みきってしまうのだから。
しかも、一度読んだ本の内容をきっちりと覚えきってしまう上に、忘れない。
その記憶力のよさのために、彼には物語などを繰り返し読む楽しみがないのだ。
…となると、本をとっかえひっかえして(といっては言い方が悪いが)楽しむしかない。
「…あーあ」
男が、退屈そうに伸びをした。
もちろん、反応が返ってくるわけもなく、時計の規則的な音がただ響くだけで。
「あれも読んだし、これも読んだし、外は何もなくて退屈だし…。
何したらいいのかな~ぁ…?」
しかし、誰も提案なぞしてくれるわけがない。
「なんてこった、返事がないどころか風が吹きもしないや」
あまりにも静か過ぎるその環境に苛立ちを感じたのか、体制を崩して机に片足を乗せた。
「あーぁ、退屈だ… あの子がいたころは暇がつぶれて楽しかったんだけどなぁ…」
思い出に浸るように、天井を眺めた。 が…
「…ああ、そういえば…」
急に何かを思い出したようで、乗せていた片足を降ろし机の引き出しを開けた。
そこには、一通の手紙が入っていた。 二年と四ヶ月ほど前に家を出た、彼からの手紙だ。
封筒に、住所もきっちりと記されている。
「あの子、どうしてるかな? ドブネズミさんとやらと仲良く喧嘩してたりするのかなぁ」
男は、ゆったりとその腰を持ち上げる。
「うーん! ちょうどいいや! あの子のところまで様子を見に行ってみよう♪」
これは名案だと、男は指をはじいた。
「そうと決まれば、早速準備に取り掛からなくっちゃ」
…といっても、彼には荷物などほとんど必要ないが。
「…せめて、髪くらい整えていこうかな」
髪を櫛と手で整え、鏡を見てみるが、鏡に自分の姿は映っていない。
なぜなら、彼も吸血鬼の血が入っているからだ。
「ん~、映んない。 完璧♪」
さて、何が完璧なのか、答えを聞いてみたいところだが。
男は、鼻歌交じりにゆったりと足を踏み出す。
「さて、気ままに出発進行~! あの子、きっとびっくりするぞ~♪」
踏み出した足で、軽く地面を蹴り上げた。
「…それに、あいつもいることだし」
くすっ。 獲物を掴み取ったような表情が見えた。
…ところで、犬や小鳥が、自分の顔を鏡で見たとき、
鏡に映る自分に喧嘩を売る個体がいることをご存知だろうか。
しかしそれは、犬や小鳥など鏡の特徴を知らない動物だからこそだとお思いだろう。
それが、この男、鏡に映る自分に喧嘩を売りたがるのだ。
…しかし、先ほども言ったように、実際に彼が鏡に映ることはない。
それでは、誰に喧嘩を売りたがるのか。
「その答えは、また今度教えてあげよう」
写真なしの文字だけ小説なりかけ系(長い)は、
『オリジナル・シーン集』としてカタログ分けすることにしました。
…さあ、この人の来訪によりおうちにいったい何が起こるのでしょうか?
とぅーびぃーこんてぃにゅーど!
今回は、なんだか物足りないと感じた不思議な男の話。
そして、予告。
以下からどうぞ。
(写真はありません)
『彼』が、この家を去って、二年と四ヶ月ほどが経った今。
家の主である男は、ひとりの時間を持て余していた。
毎日毎日、暇つぶしのために読書に浸っていた。
また、昼下がりには空を舞う蝶を眺めてみたりして。
しかし、それもそろそろネタが尽きてきたようだ。
棚には、その大変広い空間を思わせないほど、大量に本が詰められていた。
まるでパズルのように隙間を埋められている。
しかし、男の読んでいた本はこれだけではない。
要らなくなった本は古書店に売りに行き、新しく別の本を買う。
そのため、月に一度はほとんどの本が入れ替わる。
しかし、何度それを繰り返しても、本棚に隙間ができることはなく、
逆に、棚から外の空間を少しずつ本が侵食しつつあった。
なぜなら、彼は持ち前の速読ぶりで一日でシリーズをひとつ読みきってしまうのだから。
しかも、一度読んだ本の内容をきっちりと覚えきってしまう上に、忘れない。
その記憶力のよさのために、彼には物語などを繰り返し読む楽しみがないのだ。
…となると、本をとっかえひっかえして(といっては言い方が悪いが)楽しむしかない。
「…あーあ」
男が、退屈そうに伸びをした。
もちろん、反応が返ってくるわけもなく、時計の規則的な音がただ響くだけで。
「あれも読んだし、これも読んだし、外は何もなくて退屈だし…。
何したらいいのかな~ぁ…?」
しかし、誰も提案なぞしてくれるわけがない。
「なんてこった、返事がないどころか風が吹きもしないや」
あまりにも静か過ぎるその環境に苛立ちを感じたのか、体制を崩して机に片足を乗せた。
「あーぁ、退屈だ… あの子がいたころは暇がつぶれて楽しかったんだけどなぁ…」
思い出に浸るように、天井を眺めた。 が…
「…ああ、そういえば…」
急に何かを思い出したようで、乗せていた片足を降ろし机の引き出しを開けた。
そこには、一通の手紙が入っていた。 二年と四ヶ月ほど前に家を出た、彼からの手紙だ。
封筒に、住所もきっちりと記されている。
「あの子、どうしてるかな? ドブネズミさんとやらと仲良く喧嘩してたりするのかなぁ」
男は、ゆったりとその腰を持ち上げる。
「うーん! ちょうどいいや! あの子のところまで様子を見に行ってみよう♪」
これは名案だと、男は指をはじいた。
「そうと決まれば、早速準備に取り掛からなくっちゃ」
…といっても、彼には荷物などほとんど必要ないが。
「…せめて、髪くらい整えていこうかな」
髪を櫛と手で整え、鏡を見てみるが、鏡に自分の姿は映っていない。
なぜなら、彼も吸血鬼の血が入っているからだ。
「ん~、映んない。 完璧♪」
さて、何が完璧なのか、答えを聞いてみたいところだが。
男は、鼻歌交じりにゆったりと足を踏み出す。
「さて、気ままに出発進行~! あの子、きっとびっくりするぞ~♪」
踏み出した足で、軽く地面を蹴り上げた。
「…それに、あいつもいることだし」
くすっ。 獲物を掴み取ったような表情が見えた。
…ところで、犬や小鳥が、自分の顔を鏡で見たとき、
鏡に映る自分に喧嘩を売る個体がいることをご存知だろうか。
しかしそれは、犬や小鳥など鏡の特徴を知らない動物だからこそだとお思いだろう。
それが、この男、鏡に映る自分に喧嘩を売りたがるのだ。
…しかし、先ほども言ったように、実際に彼が鏡に映ることはない。
それでは、誰に喧嘩を売りたがるのか。
「その答えは、また今度教えてあげよう」
写真なしの文字だけ小説なりかけ系(長い)は、
『オリジナル・シーン集』としてカタログ分けすることにしました。
…さあ、この人の来訪によりおうちにいったい何が起こるのでしょうか?
とぅーびぃーこんてぃにゅーど!
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